備忘録

幻想郷、その果てにある人里の中。
とある少女がいた。
彼女はいつも、相棒の猫と共にいた。
猫の聴力は凄まじい。
遠くの足音まで聞こえるほどだった。
そして、嗅覚も人間の何倍もある。
その特性を活かして少女と猫はコンビを組み、小さな探偵業を営んでいた。
よく、探偵というと猫探しをしているイメージがあるが、彼女たちもまた、迷い猫探しの相談をよく受ける。
猫が猫を探すというのは、なかなか珍しい話ではないだろうか。
彼女たちの評判はよく、生活も安定し幸せな生活を送っていた。

しかし、ある日を境に少女の日常は崩れてしまう。
少女には不幸が訪れるようになる。
それどころか、少女のまわりにも悪いことが立て続けに起こるようになってしまった。
ついには少女は、天涯孤独になってしまった。
彼女は死に場所を探していた。

そこには人がいた。
赤く染まった上品そうなドレスをまとう、優雅な女性だった。
そして、彼女の目の前には少女が立っていた。
少女は女性を見つめている。
女性を気にせず手招き、自分の横に少女を座らせた。
少女はうつむいている。
実は女性は、その理由を見抜いていた。
彼女は少女にうそぶく。
少女はその言葉に、目を見開いた。
女性は古びたお守りを取り出す。
そして、それを少女の前へとかざした。
何も変わらない。
そう思っていたのは早とちりで、一瞬だけ目が眩んだ。
目を開く。
しかし、何も変わらないように見える。
いや、違う。
少女は笑っていた。
さっきまで沈んでいた少女の顔は、明るくなっていた。