プロローグ 浄玻璃の鏡

 四季映姫。彼女は死人の生前の行いを裁き今後の運命を下す閻魔。

 彼女はとても忙しい。法廷まで送られてくる死人は後を絶たない。ただそれでも、彼女の仕事が滞ることはない。彼女は死人の白と黒を瞬時に察知できるからだ。

 しかしある日、四季映姫は困っていた。法廷に立つのは一人の死人。腰まで届く長い黒髪に雪のように透き通った白い肌が映える。そこにいたのはまるで人形のような少女だった。

 少女からは何も読み取れない。白も黒も、感情すらも。四季映姫は困っていた。これでは彼女を裁くことができない。こんなこと、初めてだった。

 四季映姫は手鏡を取り出す。それは浄玻璃の鏡。閻魔たちにだけ特別に与えられる死人の生前を照らす宝物。彼女はそれを少女にかざす。そこには、少女の過去が映されていた。

 

続く